成分と栄養

大豆の成分

国産の大豆は大粒が多く、アメリカ産、中国産では中小粒が多いです。おおむね種皮部8、子葉部90、胚芽2からなり、小豆や菜豆などの雑豆類より、たんぱく質や脂質に富んでいます。

たんぱく質は大部分がグリシニンと呼ばれるグロブリンですが、そのアミノ酸組成は雑豆類や他の植物たんぱく質より優れ、含流アミノ酸であるメチオニンがやや少ないほか、牛乳(脱脂粉乳)たんぱく質に似ています。グリシニンは単一なたんぱく質ではなく、いくつかの成分から成ります。

炭水化物は30%内外ですが、その内の食物繊維含量は、国産大豆とFAOによる値にかなり差があります。これは種類による種皮率の差が影響しているものと推察されます。糖類は乾物換算で約10%も含んでおり、その約50%をスクロースが占め、40%がスタキオース、10%がラフィノースです。これらはダイズオリゴ糖として利用されています。

脂質は約20%を占め、大豆油として広く利用されています。必須脂肪酸で知られるリノール酸、リノレン酸を豊富に含み、大豆油総脂肪酸の52%をリノール酸が、10%をリノレン酸が占め、必須脂肪酸の供給源として重要な役割を持っています。

ミネラル類は雑豆類より高い含量を示しており、カリウムやリンは若干高い程度でありますが、カルシウムは2倍以上の100g中170〜240mg、鉄は1.5倍以上の8.5〜9.4mgを含んでいます。またビタミンではB1は0.66〜0.88mg、B2は0.22〜0.30mgで雑豆類の1.5〜2倍程度含まれ、ナイアシンはほぼ同じ2.2mgです。このほか、ビタミンB6が0.46〜0.59mg、Kが18〜34μg含まれています。ビタミンA効力やビタミンCはほとんど含まれていません。



大豆の栄養

大豆はたんぱく質を40%内外、脂質を20%内外含む一方、食物繊維、無機成分、さらにビタミン類に富み、栄養的に極めて優れた豆ということができます。ただ大豆は組織が硬く、かつ生理的に有害な成分を含むので加熱や発酵加工を行って組織を軟化させ、かつ有害成分を無害化させる必要があります。古来食用されてきた種々の大豆食品は以上の目的を十分果たしています。


たんぱく質

成分組成のところでも述べたように、大豆のたんぱく質はアミノ酸組成が栄養的にバランスが良く、とくにリジンに富みますが、含流アミノ酸がやや不足しています。したがって乳幼児にとって多少問題はありますが、成人にとっては動物性たんぱく質とほぼ同等の栄養価を持つとされています。また、コメなどとの組み合わせは両者の不足アミノ酸を互いに補うこともあって合理的とされています。

最近大豆のたんぱく質が血中コレステロール値を低下させることが確認され、その作用について研究が行われています。なお、元来たんぱく質の栄養価は構成アミノ酸の種類と量によって決まるとされていますが、最近消化管で分解されて生ずるペプチド類が腸管を通じて吸収され、生理活性を示すことが明らかにされつつあります。


炭水化物

大豆中には登熟(開花後、実ってゆくこと)中にはでんぷんが生成しますが、完熟するとほぼ消失します。炭水化物としてはショ糖(スクロース)の他にスタキオース、ラフィノース、ベルバスコースなどのオリゴ糖が10%内外含まれています。また、ペクチン、アラビノガラクタン、セルロースなどの可溶性または不溶性多糖が子葉および種皮に存在しています。

これらの中でショ糖は5%含まれ、エネルギー源として利用されます。しかし、オリゴ糖、多糖はほとんど分解、利用されることはありあせん。スタキオース(グルコース1分子、フルクトース1分子、ガラクトース2分子が結合したもの)、ラフィノース(グルコース1分子、フルクトース1分子、ガラクトース1分子が結合したもの)などのオリゴ糖は一方で鼓腸成分として嫌われていますが、最近は腸内のビフィズス菌増殖因子として注目されています。

この種のオリゴ糖を含め難消化性成分は食物繊維という言葉でまとめられており、セルロース、ヘミセルロースのような不溶性多糖類やオリゴ糖、ペクチン質などの水溶性成分が含まれます。食物繊維は血清コレステロール、トリグリセリド(中性脂肪)上昇抑制作用など種々の生理活性有効作用を持っています。大豆中の食物繊維の推定量は、国産大豆で100g中17.1gとされています。


脂質

脂質の大半を占める脂肪の構成脂肪酸中、大豆の場合リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸の多いことは成分のところでも述べましたが、これらは栄養的に必須とされており、また従来から血管中のコレステロールの沈着を防ぐ効果があるとされています。

リノール酸、リノレン酸のように二重結合を2〜3個有する多価不飽和脂肪酸は体内で酸化され、過酸化脂質を生成し、このものが生態に対して有害に働くとされています。このため、酸化抑制物質、例えばビタミンEとくにαートコフェロールの摂取が有効とされています。

油脂に溶けているビタミン類(脂溶性ビタミン)としてビタミンE(トコフェロール)の他にカロテン(プロビタミンA)が含まれます。トコフェロールにはα、β、γ、δがあり、そのうちγが60%で最も多く、βはほとんどありません。以上のように大豆油中に共存していれば脂肪酸の酸化防止の作用が期待できます。

レシチンは、大豆中には油に溶けた形で存在しています。レシチン(ホスファチジルコリン)は脂肪酸のグリセリドにリンおよびアミンが結合したもので、両者を合わせて2〜3%含まれます。レシチンは大豆油製造の際、精製工程で分離され、製菓用、医療用などに用いられます。また健康補助食品としても市販されています。その生理作用が明らかにされつつあります。